江戸東京の神田川
坂田 正次 1987/2/20
論創社 ISBN4-8460-0168-7 2,200円
「江戸の成立」「神田上水」「神田川」の3部構成で、前半の1部と2部は、主に中世から江戸時代にかけての神田川とその流域にまつわる歴史的事象の紹介にあてられている。「江戸」の語源についての各資料の引用だけで20件近くに及ぶ、という具合で、あまたの文献資料から神田川関連の記述が非常に丹念に抽出されている。
第三部「神田川」は、流域のさまざまな見どころのルポ風な内容。
全部ひっくるめて、多少読みづらい部分があるものの(なにしろ古文の引用が多い)、これ1冊読めば当サイトで紹介しているような話の大半はもっと詳しく正確に書いてある、というのが正直な感想。
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神田川散策絵図 善福寺川・妙正寺川・日本橋川・亀島川
村松昭
ベースボールマガジン社 ISBN458302911X 1991/6
「奥多摩散策絵図」「荒川・隅田川散策絵図」「玉川上水散策絵図」など、多数の絵地図を出版している著者による神田川流域ほぼすべての絵地図。
上流を上、下流を下にした 「縦長の折りたたみ絵巻物」のような構成で、橋の形、周囲の地形など、すべて実景が克明にイラスト化されており、くまなく現地取材し、あるいは資料文献を調べた上で描かれていることがよくわかる。
奥ゆかしいことに……というか、なるべく絵で見せる「絵地図」なので当然なのかもしれないが、流域ゆかりの有名人や旧跡などはアイコン的に描かれているものの、それらがその場所とどういう関係を持っているのかについては、ほとんど説明されていない。
知りたいと思ったら別の資料にあたるしかないわけで、その意味では資料として完結していないが、逆に「他の資料をいろいろあたって調べる楽しみを提供してくれる道しるべ」としては極めて便利な一冊に仕上がっている、というのが筆者の感想だ。
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※四捨五入すれば発行後20年、現況と多少異なる部分も多くなっているため、「古地図」のカテゴリーにも掲載しました。
※発行年月日は不正確です。
江戸の川あるき
栗田彰著
青蛙房 ISBN4790504514 1999-7-5
散策ガイドふうの構成。現存する川ではなく地名にのみ名を残す川の「跡」に焦点を当て、都内一円にわたって丹念に実際にそれをたどっている。
神田川中流部の支流跡、日本橋川下流地域にかつて多数あった掘の跡についての情報も豊富。
地味なテーマに地味な装丁の本ではあるけれど、「こういう視点の散歩も確かに楽しそう」という刺激をもたらしてくれる、という点ではけっこう一般性があるんではないかと思う。
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東京の川めぐり 東京の川・全34コース
財団法人 リバーフロント整備センター 編
山海堂 ISBN438101362X 2000/6/20
人工・天然を問わず、東京都内の大小さまざまな河川の「おすすめ散歩コース」が、実践的な散歩マニュアル的な指向でまとめられた本。近年、地元各自治体などによって河川周辺に散策道がかなり整備されていることがよくわかる。というか、そういうことのPRが主目的で刊行された本なのだろう。
団体名での出版となっているが、取材・撮影・文は基本的に室井和典というひとが一人で担当、実際にすべてのコースをひとりで自転車で回ったようだ(お疲れ様)。
神田川水系では、神田川水源~江戸川公園(江戸川橋)が6ページにわたってレポートされているほか、妙正寺川と善福寺川にも各4ページが充てられている。
内容はまさしく実践的で、「どこそこの角を曲がって、このへんは右岸を通るといい。このへんから先が景色がよい」みたいな「お散歩マニュアル」的な説明が多い。
「散歩向きのコース」があくまでも主題であるためか、日本橋もお茶の水も柳橋も出てこないのは「東京の川めぐり」という主題からすればいまいち看板倒れ感が否めないが、とはいえオールカラー200ページほどの内容で1,500円(税抜き)という価格からすれば、情報量、見た目の楽しさ(カラー写真がふんだんに使われている)などなど、「お買い得」な本ではある。
ただ、東京の川全般の総花的コースガイドというコンセプトであること、自転車での取材ということもあって、じっくり型の散歩用にはこれ一冊だけではたぶん物足りない部分が多そうでもある。
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神田川遡上
岩垣顕/著 2006/03/13
街と暮らし社 江戸・東京文庫10
ISBN4-901317-11-3
久々の「神田川を正面切って扱った本」の登場。
あくまでも「神田川」が中心テーマで、重要な支流である日本橋川、妙正寺川などはコラム的にしか扱われていないことや、たとえば「戸田平橋」の名前の「平」の字の由来を不明としている点など、ほぼ同じテーマのホームページをやっている立場としてみれば多少物足りない部分が目についたりもするが、「橋の名の由来」「地域の伝承」など、神田川にまつわる諸情報の基礎資料としてはかなり充実した内容とはいえると思う。