原信田実 著
集英社新書 ビジュアル版
# ISBN-10: 4087203891
# ISBN-13: 978-4087203899
傑作「名所江戸百景」全119景に残されている検印の日付(年月)を手がかりに、
「それぞれの絵はなぜそのとき描かれ、出版されたのか」
という従来の研究にはあまり見られなかった視点から、「画題に隠された意図や趣向」を大胆に推理したエキサイティングな浮世絵研究解説本。
浮世絵は当時最先端の商業出版物=商品であったわけで、特にこの「江戸百」シリーズでは、当時の江戸近辺の出来事(たとえば人気急上昇中の観光スポット)をタイムリーに反映してゆくことが作品の「商品価値」を高めていたはずだし、そこには広重本人のみならず、版元の意向(あるいは「企画力」)も強く影響していたに違いない。
……と、従来の諸研究では抜け落ちていた(らしい)視点を覚醒させた「目ウロコ」な一冊。1枚1枚の絵にまつわるすべての指摘が妥当だとは必ずしもいえない(あくまでも「仮説」)にせよ、特にイラストレーターや出版編集関係者なら、一気に「江戸の売れっ子イラストレーター・広重」への親近感がわかずにはいられないんじゃないかと思う。
ちなみにこの本、新書なのに1155円もするが、オールカラーという点を考えれば納得の値段。